産婦人科

新型出生前検査

採血によって赤ちゃんの染色体異常を調べる検査です。
※詳しくは診察の際に医師にご相談下さい。

新型出生前検査(NIPT:非侵襲性出生前遺伝学的検査)をご希望の方へ

はじめに

出生前におなかの中の赤ちゃんが染色体疾患をもっているかどうかを確実に検査する方法として羊水検査や絨毛検査がありますが、これらは流産などの危険性を伴う検査(子宮に針を刺す検査)です。そこで、危険を伴わずに赤ちゃんが染色体疾患をもつ可能性を検査する方法が開発されており、その一つがNIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)です。
この説明文書には、NIPTをお受けになるかどうかを決めるために知っておいていただきたいことや注意していただきたいことが記載されています。

NIPTの概要

  • ・NIPTはおなかの中の赤ちゃんが染色体疾患をもつ可能性をみるための検査です。
  • ・検査対象となる染色体疾患は21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーです。
  • ・妊娠9~10週以降に妊婦さんから10~20mlの血液を採取して、血液中に浮遊しているcfDNA(染色体が細かく分解されたもの)を分析して結果を出します。
  • ・結果は「陽性」、「陰性」、または「判定保留」と報告されます。「陽性」とはその疾患の可能性が高いという意味です。
  • ・妊婦さんの血液中に浮遊しているcfDNAのうち約10%が赤ちゃん由来ですが、正確には胎盤に由来します。そのためNIPTは精度の高い検査ではありますが、染色体疾患の可能性の高さを判定しているにすぎません。
  • ・検査結果が「陽性」の場合には、羊水細胞や絨毛細胞を用いた確定検査が必要です。また、「判定保留」の場合には、その後に取りうる対応について再度相談する必要があります。

染色体とは

  • ・多くの人の染色体は46本で、常染色体(1~22番染色体)のペアと、性別によって異なる染色体(X・Y染色体)のペアからなっています。
  • ・染色体には多くの遺伝子(ヒトの体や働きの設計図)が詰まっています。
  • ・染色体に数や形の変化が起こると、成長や発達に影響を与えたり、生まれつきの病気や体つきの特徴をもつことがあります。
  • ・「トリソミー」とは本来2本(ペア)である染色体が、3本ある状態で、例えば21トリソミーとは、21番染色体が3本ある状態のことです。「トリ」とは3をあらわします。

染色体(46,XY)

NIPTでわかること・わからないこと

NIPTは21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの染色体疾患の可能性を調べる検査で、それ以外の疾患はわかりません。

  • ・生まれて来る赤ちゃん100人中に3~5人ほどは先天的な疾患をもって生まれてきます。
  • ・この中で染色体が原因の疾患は約25%で、NIPTの検査対象である3つの染色体疾患は、さらにその約70%です。このことを計算してみると、3つの染色体疾患のある赤ちゃんは100人あたり0.7人程度となります。

先天性疾患の頻度と染色体疾患(Thompson & Thompson Genetics in Medicine 8th Edition Saunders 2016; Wellesley D, et al. Eur J Hum Genet 2012: 20:521)

母体年齢とトリソミー児の出生頻度の関係

妊婦さんの年齢が上昇すると、トリソミーをもつ赤ちゃんの出生頻度が高くなることが知られています。
それ以外の染色体疾患では、その影響は明らかではありません。

妊婦さんの年齢によって疾患の頻度は高くなりますが、縦軸の最大値を100%とすると上昇傾向ははっきりしません。右のグラフのように拡大してみてみると上昇傾向が見えてくる程度です。

出産時の母体年齢別の染色体疾患の出生率(Morris JK et al., J Med Screen 9:2-6,2002; Morris JK et al., Prenat Diagn 25:275-278,2005; Appendix in Savva GM et al., Prenat Diagn 30:57-64,2010)

私たちの多様性と先天性疾患

染色体が原因となる生まれつきの変化を含め、赤ちゃんが先天性疾患をもつことは誰にでも起こりえることです。そのことにより赤ちゃんが多くの人とは違った特徴を示すことがありますが、それは誰もがもつ人としての多様性、その人の個性の一部として受け入れるべきものです。また、誰もが誕生を祝福されるいのちをもっているのです。

生まれつきの変化によって人とは違った特徴をもつことが生き辛さにつながる可能性は否定できません。その一方で人の幸不幸はそういった特徴のみで決められるものではないとも言えます。

どのような境遇にあろうと、みな我々と共に生きる社会の一員であり、お互いを認め合い、助け合う社会を実現するために行政による公的福祉サービスが用意されています。

一方で、さまざまな事情により、生むことをあきらめる選択をする方もおられますが、その選択も尊重されるものです。妊娠の継続や中断については、経験者などによる、いわゆるピアサポートを行う団体もあります。

親子の未来を支える会 https://www.fab-support.org

検査対象となる疾患の特徴

21トリソミー(ダウン症候群)
  • ・一般的に、約1000人に1人の割合で出生するといわれています。
  • ・生後の身体や言語の発達は全体的にゆっくりですが、適切な成育環境(療育など)によって成長発達を促すことができます。
  • ・心疾患、消化器系疾患などの病気をもつ場合があります。しかし最近は医学の進歩により、多くは乳幼児期に改善するようになっています。
  • ・学齢期は地元の学校や特別支援学校に通っています。
  • ・大人になると生活介護が必要になることもありますが、行政によるサポートを受けながら地域の中で生活する方も多く、生涯に渡ってさまざまな支援サービスが用意されています。
  • ・小児慢性特定疾病に認定されており、医療、福祉、当事者のコミュニティなどのサポート体制があります。
  • ・各地には親の会やサークル活動などの情報交換の場があり、福祉のサポート体制も整っています。

公益財団法人日本ダウン症協会 https://www.jdss.or.jp

ヨコハマプロジェクト https://yokohamapj.org/

18トリソミー(エドワーズ症候群)
  • ・一般的に4,000~10,000人に1人の割合で出生するといわれています。
  • ・妊婦健診で行われる超音波検査で赤ちゃんの発育不全や心疾患、消化器系疾患、四肢の形態変化などを認めることからみつかることがあります。
  • ・複数の病気を持って生まれてくることがあり、呼吸や哺乳のサポートなど、生後早期に医学的な管理が必要になることがあります。
  • ・心疾患や呼吸不全などの病気のため、生後早期に亡くなることがあります。一方、積極的な医療介入により生命や生活の見通しが改善すると報告されており、一部で長く生存して成人を迎える方もいます。
  • ・小児慢性特定疾病に認定されており、医療、福祉、当事者のコミュニティなどのサポート体制があります。

18トリソミーの会 http://18trisomy.com

13トリソミー(パトウ症候群)
  • ・一般的に5,000人〜 10,000人に1人の割合で出生するといわれています。
  • ・妊婦健診で行われる超音波検査によって心疾患、中枢神経・消化器系疾患などの病気、身体の形態変化などでみつかることがあります。
  • ・複数の病気を持って生まれてくることがあり、呼吸や哺乳のサポートなど、生後早期に医学的な管理が必要になることがあります。
  • ・心疾患や呼吸不全などの病気のため、生後早期に亡くなることがあります。一方、積極的な医療介入により生命や生活の見通しが改善すると報告されてきており、一部で長く生存して成人を迎える方もいます。
  • ・一人で歩いたり、言葉を話せるようになることは稀ですが、ゆっくりと成長・発達します。
  • ・小児慢性特定疾病に認定されており、医療、福祉、当事者のコミュニティなどのサポート体制があります。

13トリソミーの子どもたち☆PROJECT13☆ http://trisomy13.blog.jp

13トリソミーの子供を支援する親の会 http://www.13trisomy.com/next.html

小児慢性特定疾病 [小児慢性特定疾病対策の概要 |厚生労働省] mhlw.go.jp

検査を受ける前に、もう一度確認いただきたいこと

  • NIPTは妊婦さんの採血のみで実施できますが、赤ちゃんの染色体疾患を出生前に調べる検査です。「陰性」以外の結果がでることで、さまざまな困難に直面する可能性があります。
  • NIPTは侵襲的で流産リスクのある羊水検査などを受けるどうか、悩む妊婦さんがその判断材料として行う検査ともいえます。
  • NIPT「陽性」とは、3つのトリソミーのうちいずれかの可能性が高いという結果です。
    • ・この検査では診断を確定できません。診断を確定するためには羊水検査や絨毛検査を受ける必要がありますが、おなかから子宮内に針を刺す検査のため、300分の1程度の確率で流産が起こります。
    • ・「陽性」でもその染色体疾患ではない場合もあります(偽陽性といいます)。例えば、35歳の妊婦さんの「21トリソミー陽性」という結果の場合でも、実際に赤ちゃんがダウン症候群ではない確率は約20%あります。
    • ・「陽性」の結果であった場合、結果に関する詳しい説明やその後の対応について遺伝カウンセリングを受ける必要があります。
  • NIPT「陰性」とは、3つのトリソミーの可能性が低いという結果です。
    • ・3つのトリソミーでない確率はいずれも99.9%以上ですが、100%否定できるわけではありません。非常にまれですが、陰性の結果がでたとしても染色体疾患のある場合(偽陰性)があります。
    • ・3つのトリソミー以外の先天性疾患も多いため、「陰性」だとしても、赤ちゃんが健康であることを示す結果ではありません。
  • NIPT「判定保留」とは、「陽性」か「陰性」かの判定ができないという結果です。
    • ・わが国のデータでは0.3~0.4%ほどの確率で「判定保留」となることがあります。
    • ・その後に取りうる対応(再度NIPTを行う、NIPTでの検査をあきらめる、羊水検査などを行うなど)について再度相談する必要があります。
  • 検査でおなかの中の赤ちゃんに染色体疾患の可能性があることが判明しても、実際に生まれてくる赤ちゃんの症状やその後の発育の様子については個人差があるためはっきり分かりません。また、疾患の治療にも直接つながりません。
  • 検査の本来の目的は赤ちゃんの染色体疾患について調べることですが、妊婦さん自身の染色体疾患や悪性腫瘍などが、この検査を契機に発見されることがあります。
  • 検査前の遺伝カウンセリングを通じてこの検査のことをよく理解し、ご自身とパートナーにとって必要があるかどうか十分に納得したうえで、実際に検査を受けるかどうかを決めてください。
  • NIPTを受けても受けなくても、お二人で十分に検討された意思決定は最大限に尊重されます。
  • 赤ちゃんやご家族の将来に関する不安や心配については、いつでも相談に応じます。より詳しい説明を希望される場合は、施設内の小児科や外部の適切な施設を紹介することもできます。
  • 赤ちゃんに何らかの先天性疾患がある場合、さまざまな医療や公的サービスを受けることができます。なすすべがない訳ではないことを再度強調しておきます。

参考資料

妊娠中の赤ちゃんの染色体疾患を調べる検査の種類とその特徴

当施設は、出生前検査について以下の施設(基幹施設)と連携しています。

施設名 茨城県立中央病院
担当医師 産婦人科 安部加奈子、小児科 齋藤誠
施設住所
茨城県笠間市鯉淵6528
相談連絡先 0296-77-112 0296-77-112

検査前や検査後に小児科医の遺伝カウンセリングを受けることができます。当施設で連携している小児科専門医は以下の通りです。

医師名 齋藤誠(出生前コンサルタント小児科医・臨床遺伝専門医)
施設名 つくばセントラル病院
連絡先 029-872-1771 029-872-1771 (産婦人科外来)

当院で出生前検査をご希望の方へ

当院で対応できるクワトロテストとNIPT、紹介が必要となる羊水検査について簡単な情報提供です。
詳しい話を希望される場合には下記に書かれている遺伝カウンセリング外来を予約下さい。

出生前検査一覧

検査名 クアトロテスト
(母体血清マーカー検査)
NIPT/新型出生前診断*
(母体血胎児染色体検査)
羊水検査
費用 約 2万 5千円 約 15 万円 約12万円
対象疾患 21 トリソミー
18 トリソミー
開放性神経管奇形
21 トリソミー
18 トリソミー
13 トリソミー
全染色体の数的・
構造変化
流産リスク 21 なし なし あり
確定/非確定 非確定検査(確率検査) 非確定検査 確定検査
適切な検査時期 妊娠 15 週~18週未満
(当院では15週頃)
妊娠 9~16 週未満
(当院では10~14週頃)
妊娠16~18週
結果までの日数 10 日程度 10 日程度 2~3週間
検査方法 外来で採血 外来で採血 腹部穿刺

*NIPT(Non-Invasive Prenatal Genetic Testing)…母体血胎児染色体検査

※検査費用は 2022 年12月現在

  • ・NIPT検査を希望された場合は、出生前カウンセリングが必須となります。
  • ・出生前カウンセリングは完全予約制で、産婦人科専門医または周産期専門医、日本産科婦人科遺伝診療学会認定医、臨床遺伝専門医が対応いたします。まずは、話だけでも聞きたいという方もご予約いただけます。
  • ・出生前カウンセリングは胎児の染色体異常について不安があり、出生前検査を希望されているまたは検査を受けるか迷っている方を対象としています。
  • ・妊婦さんとパートナー、お二人でのご来院を推奨しております。
  • ・出生前カウンセリングでは、出生前検査を正しくご理解いただくための情報提供を行い、お二人のお気持ちに寄り添いながら、お二人の意思決定を尊重し、支援いたします。
  • ・カウンセリングで出生前検査を否定されることや検査を強制されることはありません。
  • ・出生前カウンセリングの費用は、自費診療となります。

実際の流れ

  • 1. 産科外来にてご予約(木・金 、当院通院中の方のみ)
  • 2. 予約時に検査についての説明書および同意書をお渡しします。内容について確認し、もし陽性だった場合にはどうするかなど事前にご夫婦やパートナーとよく話し合ってください。
  • 3. 出生前カウンセリング(夫またはパートナーの同席推奨)自費診療 2880円/15分
  • 4. 検査 クアトロテスト、NIPTをご希望の方は、週数などの条件が合えば、出生前カウンセリング当日に採血を行うことが可能です。
    もし当日に夫またはパートナーの同席が難しい場合にはサイン済の同意書を持参してください。
    羊水検査を希望される場合には、他院(筑波大または茨城県立中央病院)を紹介することになります。
    *健診から1週間以上あいている場合には、超音波検査で心拍の有無を確認します。
  • 5. 結果報告(夫またはパートナーの同席推奨)