眼科

白内障手術の進歩について

近年、白内障手術の進歩は目覚しいものがあります。1984年、本邦でも眼内レンズが認可され、白内障手術=眼内レンズ挿入術と認識されるようになりましたが、さらに白内障手術法、眼内レンズの材質に革命的進歩が認められ、今日ではより小さな切開創で、低侵襲の白内障手術が追究されるようになっています。

切開創が小さくなるほど、眼球に外力が加わっても、創離開や術後感染症ののリスクは減少し、術後の角膜の歪みが原因の乱視が少なくなど、安全性の向上、視機能回復に関するメリットが大きくなります。

1980年代前半の眼内レンズ導入当時の白内障手術は計画的水晶体嚢外摘出術と呼ばれる方法で、水晶体内の大きく硬い核をそのまま摘出するため、約9~11㎜もの切開幅が必要でした(図1A )。眼内レンズの光学部の直径は当時から6㎜のものが主流でしたが、それよりも著しく大きな切開創口を作製していたわけです。

1980年代後半になると、米国のKelmanにより開発されていた、超音波により水晶体核を乳化破砕して吸引する方法が進歩して、約3㎜の切開幅で白内障手術自体は完了可能となり(図1B)、当時光学部材質の主流であったpolymethylmethacrylate(PMMA)眼内レンズ(硬いレンズ)挿入は、その光学部径より少し大きめ、すなわち6.5~7㎜ほどの切開幅で十分となりました(図2)。この超音波水晶体核乳化吸引術を用いた眼内レンズ挿入術は、当時計画的水晶体嚢外摘出術に対して小切開白内障手術として扱われました。

1990年代半ば、シリコンやアクリル樹脂を材質とした、柔らかく折り曲げても元の形状に復する眼内レンズが登場し、超音波水晶体核乳化吸引術を行う場合、PMMA眼内レンズに代わって使用されるようになりました。

レンズの光学部の直径6㎜を二つ折りにすれば、幅3㎜になるものの、光学部の中心厚はレンズの屈折率や度数により異なりますが、0.7㎜前後あり、ピンセットで挟んで眼内に挿入する場合、3.5~4.1㎜ほどの切開幅が必要となります(図3)。

最近では、眼内レンズを特殊なカートリッジに入れてから、カートリッジ内をピストンで押し進めることにより、眼内レンズの通過に必要な断面積を縮小させて眼内に挿入する方法が開発され、切開幅3㎜以下で眼内レンズ挿入が可能となりました(図4A、B )。

現在当院での切開幅の標準は大きな屈折度数の(光学部の中心厚が厚い)眼内レンズでも2.8㎜です。

今後も患者様にとりましてより安全で、視機能回復効果が高い最新の技術を導入して行く方針ですので、白内障手術をお考えになられている患者様は、どうぞお気軽につくばセントラル病院眼科でご相談ください。